日常に潜むさまざまな工夫を探求し、面白がり、褒め称える「工夫日報」。第1回は、東京・等々力駅徒歩1分のカフェ、「オモンパカル」の店主・佐藤美穂さんを訪ねました。
佐藤さんと工夫舎の出会いは、『工夫 #01』の即売会。「Facebookでみてて気になって」と、遊びに来てくれた佐藤さん。会場で『工夫 #01』を囲みながら色々なお話をしているうちに、オモンパカル(慮る=よくよく考える)という素敵で不思議な名前のカフェを営まれていることを知りました。佐藤さんのInstagramは毎日、創意工夫に満ちた手づくりのお菓子が並んでいます。カフェという場づくりも、お店の立ち上がり方もなんだか面白そう! と、いうことで、佐藤さんの工夫を伺いました。
(取材執筆|副舎主・中田一会/撮影|写真係・黒羽政士)
無理なくお店を継ぐ工夫=変わっていく自分でやるしかない
「カフェ オモンパカル」のはじまりは、同じ場所で営業してきたカフェ店主の「引退」がきっかけ。そのお店で店員として働いていた佐藤さんが、店舗とメニューを引き継ぎ、一念発起して(もともといつかお店を持つ予定だったそうですが)2017年の元旦に開業しました。店名は違えど2代目マスターを務めることになった佐藤さんの工夫のポイントは、無理なく継ぎ、自分らしく続けること。
そんな佐藤さんの工夫をご紹介します!
工夫その1、「変わっていく自分でやるしかない」と腹をくくる。
季節や条件によって食材は変わるもの。ひとり経営のカフェでは人手だって万全ではありません。「同じものをつくれないという状況」「同じものをつくっていると飽きる自分」を並べて考えた結果、「変わっていく」を受け入れるということにしたという佐藤さん。
「喫茶店のメニューって時間が止まったように同じもので、安定したイメージだったけれど、そうじゃなくてもいいかなって思ったんです。その日その都度、ちゃんと美味しくて味が決まっていればいい。お客さんも意外とそれでいいんですよね。『今日は違う素材なんだ!』と喜んでくれたり。カフェってレストランやパティスリーとは違って、『同じものが毎日あるとはいえないけど、何かしらあるよ』っていう構え方でも大丈夫なだと気づきました。それに、同じものを100個つくるなんて楽しくない。つくりたいものをつくりたいじゃないですか!」
工夫その2、「受け入れてくれる系の生地」をつかう
「旬野菜のカレー」や「本日のケーキ」とメニューに書いて、その日その時期の食材を使うことに決めた佐藤さん。そのために工夫したのは「何でも受け入れてくれる系の生地」をベースにすること。マフィン、スコーン、ニューヨークチーズケーキ、タルト、パウンドケーキ……佐藤さんのお店に並ぶお菓子は、どんなものとも組み合わせられる生地をベースに作られています。
工夫その3、変えないものは、「コーヒー、定休日、値段、パスタの銘柄、犬OK」。
オモンパカルのある等々力は、等々力渓谷を訪れる観光客と、近所の住宅街に住む人の両方がやってくる土地柄。前マスター時代の常連さんのために、「変えないもの」を守ることも大事。
「でもそれ以外は変えたら面白いものなんですよ」と笑う佐藤さんは、お店の看板の出し方を変えたり、焼き立てお菓子のお知らせ方法を工夫したり、レシピの配合を次々変えたり……と、楽しく実験を繰り返しています。近所のご婦人に「カレーじゃない感じなのにカレーなのよねえ」と気に入られているオリジナルスパイスの「旬の野菜カレー」は、絶品です!
カフェなのに、「その人に合わせたメニュー」まで出てくる不思議なお店。オモンパカルは名前のとおり、訪れるひとのことを”慮る”素敵なカフェでした。
工夫の人:佐藤美穂さん
カフェ オモンパカル店主・料理人。
1986年、メキシコ生まれ。3歳の時に神奈川県川崎市に転入。大学では生活科学部食生活科学科食物科学を専攻。在学中にフルーツパーラーでアルバイトを始め、卒業後はそのまま正社員として勤務。後に、カフェのビジネススクール「カフェズ・キッチン」に入学。約2年通うなかで現店舗の前マスターと出会い、そのもとでスタッフに。2017年1月1日、前マスターの引退により店舗を引き継ぎ、新規に開業。現在に至る。
カフェ オモンパカル
http://omonpakaru.info/
住所|東京都世田谷区等々力2-33-8
アクセス|東急大井町線・等々力駅から歩いて1分(約100m)
定休日|月曜(祝祭日の場合は営業し、火曜休業に振替)
*営業時間やメニューなど、詳しくはウェブサイトをご覧ください